Novel
妹ソフィアと大公クラウディウス
玉座から見つけた、小さな妹の笑顔。

玉座というものは、不思議なほど手持ち無沙汰だった。
今は次の段取りまで待ちの時間らしい。大法官が式次第を確認しているのか、前方でなにかもたもたしている。侍従たちが小声で言葉を交わし、大聖堂全体が微妙な間を持て余している。
私もそのひとりだ。
何もすることがないので、視線だけを動かして会場を眺める。
左の貴賓席、礼装の列。その中に——見つけた。
小さかった。
七歳というのは、こんなに小さかったか。薄い金色の髪が、天井からの光を受けてほんのり輝いている。深い青の礼装は大人のものを縮小したような仕立てで、それが七歳の体には不釣り合いなくらい堂々と似合っていた。背筋がまっすぐだ。両手はきちんと前で重ねて、視線はどこか遠くの一点に静かに据えられている。
いや、これ本当に七歳?
ソフィアは、私がそこにいることをとっくに知っていたと思う。
それでも、私が見ているのに気づいた瞬間、彼女はほんの少しだけこちらに顔を向けた。
笑った。
やわらかい笑顔だった。声もなく、動作も小さく、ただ目が細くなって口角が少し上がっただけ。それだけのことなのに——目が、輝いていた。笑顔というより、目の光り方が全然違った。
……なんかすごい目で見られてる。
慌てて笑い返した。口角を上げようとして、たぶん頰の片方だけが変な動きをした。ソフィアが、ほんの少し首をかしげる。……あ、伝わってない。直そうとしたときには、もう前を向いてしまっていた。なんか嬉しそうだった、とだけわかった。
……かわいい。
かわいいにもほどがある。
天使みたい。
さすが、みんなが推しているだけのことはある。
私がこの子の立場だったら——と思った。
やめよう。
気を取り直して、視線をずらす。
ソフィアのすぐ隣に、ひときわ大柄な老人がいた。白い髪に白い顎鬚。立っているだけで場所を占領するような体格で、礼装の金の刺繍が他の誰のものとも違う。動いていないのに存在感が空間に漏れ出していた。
あれが、大公クラウディウスだろうか。
話には聞くけど、いまだに面識はない。
皇配の父。ソフィアの、祖父。
帝国で最も格式の高い家の当主で、母が生きていた頃からずっと宮廷の中心にいる人。この国を実質的に動かしているとも言われている。そういう説明は受けた。
でも、説明と実物は違う。
この人が何を考えているのか、まったくわからなかった。表情があるのかどうかもよくわからない。視線の向く先も読めない。護国卿のように若さが目を引くわけでもないのに、場の重心がそこにある感じがした。
ソフィアと並んで立っているのを見ると——
その時。
ソフィアの方向へ、大公の目が動いた気がした。ほんの一瞬だけ、何かが変わった。表情が変わった、というより、表情を変えないための力が、一瞬だけ緩んだような。とても遠かったし、見間違いかもしれない。
……今ちょっと顔が変わった?
このおじいさん、何なのかわからない。
私は正面を向いた。大法官がこちらに向き直ったところだった。
次の段取りが始まりそう。